言葉辞典出張版版

ネットに散らばっている言葉を集めている。それだけだ。

パレード、サーカス、コインランドリー、夏、子供時代、レコード、録音、フィルム、休日、ハイウェイ、バス、コーヒー、煙草……そして、船。この物語に点在するイメージは、回転するようにゆっくりとしか変わらない風景にある。終わらない日常の連続。でも、行く先は死……終末に向かって歩みを止められないのだ。その死の行進は歩み者たちは、漂流者であり、サーカスのパレードのように華やかでもある。終わりゆくことがこんなにも美しいのかと、読者は錯覚する

それは全部、間違いである。

この物語は二つのレイアーが存在する。絶望と希望。死と生。最悪と最高。相反する二つの黒と白、モチーフはすでに、主人公のアシカたちの色にも関係し、言葉で説明されることなく、読者は分かってしまう。繰り返されるイメージ、その象徴と記号を行き来するうちに物語に引き込まれてしまうのだ。これはマンガという奇跡である。白と黒しか存在しない紙の中だからこそ、存在できる世界、ファンタジーなのだ