2017-02-01から1ヶ月間の記事一覧
頑張って、いつの日か私の腹を満たしてくれたまえ。 もしくは赤ちゃんを、我が子を生んでくれたまえ。 頼んだ。
そして、とうとう昨晩出航いたしました。 私に紙テープを投げることなく。
それは、回転する独楽が極まって澄むような静謐、生(いのち)の極み、いわば「死に似た静謐」ととなり合わせに感じたかもしれない。
彼女は幼い頃から海に憧れていた。そして、いつの頃からか彼女の死んだ兄が言っていた 「海なんて、どこまで行ったってありはしないのだ。たとい海へ行ったところでないかもしれぬ」 という言葉の意味がわかるようにもなってきたが、海を見ることは変らずに…
われらはもはや神秘を信じない。自ら神風となること、自ら神秘となることとは、さういふことだ。 人をしてわれらの中に、何ものかを祈念させ、何ものかを信じさせることだ。その具現がわれらの死なのだ。
人はもちろんただちに、「何故神風が吹かなかつたか」といふ大東亜戦争のもつとも怖ろしい詩的絶望を想起するであらう。 なぜ神助がなかつたか、といふことは、神を信ずる者にとつて終局的決定的な問いかけなのである。
今、晩夏に沈む太陽は海を血潮のように染めていた。安里の中にはもう故郷に還りたいという望みはなかった。 海が2つに割れなかった時、故国の羊や人々はその夕焼けの海の中に全て消滅したのだと安里は考えた。 でも安里は夕焼けの色が無くなり灰色になるまで…