言葉辞典出張版版

ネットに散らばっている言葉を集めている。それだけだ。

ロケットが空に上がっていたが、音はなかった。
すべての音が止んでいた。
世界の最も非情な姿がことごとくそこにあった。
例えば、大地の石、人間や動物たちの骨は永久に消え去ってしまった如くだし、
豊かで抗しがたい大きな波が、無限の優しさでいっさいの事物を水の下に沈めていた。
そして、この新しい大洋の真ん中には、エブドメロスの船が帆をいっぱいに張り、ひとところをじっと漂っていたのだ。
そのときである、ドアの把手が何者かの得体のしれぬものの手でゆっくりと回され、
病弱の老人が冬の夜中で震えていた。
 エブドメロスはとたんに崩れた廃墟の石の上にあご肘をつき、もはや何も考えなくなった。
そうしてそのまま暫時、すべての思考が神秘の未知の言葉となって、無垢の白さを誇っていった。