言葉辞典出張版版

ネットに散らばっている言葉を集めている。それだけだ。

偶像も同一どういつです。唯ただ偶像なら何でもない、この御堂のは観世音かんぜおんです、信仰をするんでしょう。
 じゃ、偶像は、木き、金かね、乃至ないし、土。それを金銀、珠玉しゅぎょくで飾り、色彩を装よそおったものに過ぎないと言うんですか。人間だって、皮、血、肉、五臓ごぞう、六腑ろっぷ、そんなもので束つかねあげて、これに衣きものを着せるんです。第一貴下あなた、美人だって、たかがそれまでのもんだ。
 しかし、人には霊魂れいこんがある、偶像にはそれがない、と言うかも知れん。その、貴下あなた、その貴下あなた、霊魂が何だか分らないから、迷いもする、悟りもする、危あやぶみもする、安心もする、拝みもする、信心もするんですもの。
 的まとがなくって弓の修業が出来ますか。軽業かるわざ、手品てじなだって学ばねばならんのです。
 偶像は要いらないと言う人に、そんなら、恋人は唯ただ慕う、愛する、こがるるだけで、一緒にならんでも可いいのか、姿を見んでも可いいのか。姿を見たばかりで、口を利かずとも、口を利いたばかりで、手に縋すがらずとも、手に縋っただけで、寝ないでも、可いいのか、と聞いて御覧なさい。
 せめて夢にでも、その人に逢あいたいのが実情です。
 そら、幻にでも神仏かみほとけを見たいでしょう。
 釈迦しゃか、文殊もんじゅ、普賢ふげん、勢至せいし、観音かんおん、御像おすがたはありがたい訳わけではありませんか。」